「赤が4回続いたから、次は黒?」その“祈り”が、あなたの資金を溶かす理由
カジノのルーレットテーブル。
ふと横の履歴ボード(出目表)を見ると、異常な事態が起きています。
「赤・赤・赤・赤」
4回連続で「赤」が出ています。
この時、チップを握りしめたあなたの脳内で、悪魔がこう囁くはずです。
「確率的に考えて、5回も連続で赤なんてありえない。次はバランスを取って『黒』が来るはずだ!」
結論から言いましょう。
その瞬間、あなたは投資家ではなく、カジノにとって「最高に美味しいカモ」になっています。
今回は、多くのトレーダーを退場に追い込む「ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)」と、相場の「値ごろ感」という危険な罠についてお話しします。
ルーレットのボールに「記憶」はない
冷静になって考えてみてください。
ルーレットの盤やボールに、「メモリ(記憶装置)」は内蔵されているでしょうか?
「さっきまで赤ばかり出したから、そろそろ黒を出して確率を50%に戻してあげよう」
ボールがそんな気遣いをしてくれることは、天地がひっくり返ってもあり得ません。
前回が赤だろうが、10回連続で赤だろうが、次の1回で赤が出る確率は、常に50%(緑の0を除いた場合)です。
過去の結果は、次の結果に一切影響を与えない。
これを確率論では**「独立事象」**と呼びます。
「次は黒が来るはずだ」というのは、数学的な根拠ではなく、人間の脳が勝手に作り出した「偏りを嫌う錯覚」に過ぎないのです。
チャートの前で、同じ「祈り」を捧げていませんか?
さて、舞台をカジノからあなたのトレードルームに移しましょう。
目の前のチャートは、連日の暴落で真っ赤な陰線を並べています。
「これだけ下がったんだから、明日は反発するだろう」
「もう十分に安い。そろそろ底打ちして上がるはずだ」
ドキッとしませんでしたか?
実はこの思考、「赤が続いたから次は黒だ」というルーレットのギャンブラーと、脳の使い方が全く同じなのです。
これを相場の世界では**「値ごろ感」**と呼びます。
何の根拠もなく、ただ「過去の動き(下落幅)」だけを見て、「そろそろ逆の動き(上昇)が来る」と期待する心理。これは分析ではなく、ただの「願望」です。
相場はルーレットよりも「残酷」である
さらに恐ろしい事実をお伝えしましょう。
ルーレットの「逆張り(赤続きの後の黒)」は、当たる確率が50%あります。
しかし、相場の「値ごろ感での逆張り」は、しばしば50%以下の勝率になるのです。
なぜか?
ルーレットには他人の心理が介在しませんが、相場には**「パニック」**があるからです。
「これだけ下がった」という事実は、多くの市場参加者に「もっと下がるかもしれない」という恐怖を植え付けます。すると、売りが売りを呼び、価格は適正水準を遥かに超えて、地獄の底まで突き抜けていきます。
いわゆる**「落ちるナイフ」**です。
ルーレットの赤は決してなくなりませんが、株価や通貨の価値は、最悪の場合「ゼロ」になる可能性があります。「もう下がらないだろう」というあなたの財布の事情など、相場は一切考慮してくれません。
「ギャンブル」を「トレード」に変える方法
では、暴落時に買うことは全て間違いなのでしょうか?
いいえ、違います。勝てるトレーダーも暴落時に買います。しかし、彼らは「値ごろ感」では買いません。
彼らは、**「根拠」**で買います。
- ギャンブラーの思考:「こんなに下がったんだから、上がるはずだ(感情)」
- トレーダーの思考:「RSIが売られすぎを示唆し、過去の強力なサポートラインに到達した。さらに下位足で反転のチャートパターンが出たから、リスクを限定してエントリーしよう(論理)」
前者は「祈り」であり、後者は「確率へのベット」です。
結論
もしチャートを見て「そろそろ」という言葉が頭に浮かんだら、思い出してください。
その「そろそろ」は、ルーレットの「次は黒」と同じ妄想ではないか? と。
ボールに記憶がないように、相場にも慈悲はありません。
「値ごろ感」という甘い罠を捨て、事実と根拠だけを武器に戦うこと。
それだけが、あなたをギャンブラーから投資家へと進化させる唯一の道なのです。

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